ファゴット奏者 水本芳枝

緊急事態宣言下における公演開催と音楽活動

リサイタルが終わり、早いものでもう2週間が経とうとしています。

実はリサイタルからさほど日を置かずに娘の受験がありましたので、余韻に浸る間もなくあっという間に日常生活に戻ったため、なんとなくもっと前の出来事だったような気がしています。笑

リサイタルの準備や開催を経て気付いたこと、特に書き残しておきたいこと少しずつ文章にしていますが、中にはあまり表に出さないほうがいいような話もありますので、基本的にはお知り合いの方向けにFacebookのプライベートアカウントの方で書いています。

今回は「緊急事態宣言」に関することを書こうと思いますが、この話題はいろんな方に知っていただいてもいい話かもしれないと思いましたので、ブログに書きますね。


リサイタルは元々いろんな事態を想定して企画準備しましたので、やろうと決めた昨年秋ごろ(結構最近ですね!)から比較して感染者数が増えたとしても中止になることなく開催が出来るものと思っていました。

ただ、これも今思えば詰めが甘いのかもしれませんが、さすがに緊急事態宣言がもう一度出るとは思っていませんでした…。

無観客開催の可能性は念の為視野に入れていて、だからこそライブ配信もセットで行うことにしていたのですが、最悪でも入場者数の上限をもう少し減らすぐらいだろうと予測していたので、緊急事態宣言が出ることになりいよいよ無観客開催が現実のものになったかと恐々としていました。

しかし、実際には前回の緊急事態宣言のように殆どのイベント・コンサートが中止となる流れではなく、会場キャパの50%以内なら開催して良いということだったので、他の演奏会がどうなるのか様子も見つつ、最終的には予定通り開催となりました。

元々私のリサイタルは企画段階で収容人数50%以下と設定していたのでその点においては問題なかったのですが、やはり緊急事態宣言の影響は多少受けてしまったのと、この状況でもご来場いただけるお客様にはより安心していただけるように客席上限は元々設定していた30席より少し減らしました。


クラシックの自主公演って収入面はなかなか厳しいものがあります。
私はコロナ前までの私が関わる自主公演については、なるべく収支がマイナスにならないことをひとつの課題として取り組んでいました。これは結構難易度の高いことなのですが、全ての公演において黒とはいかないまでも一定の成果は得られていたと思います。もちろん私だけが頑張ったのではなく、開催に向けて一緒に関わってくれた仲間や素晴らしいゲストの皆様がいてこその賜物です。
公演の収支を考えるとき、もちろん満席にしたいのは山々なのですが、満席前提で計算するのは危険なので、この公演内容や会場・場所でどの程度集客が見込めるかというところも総合的に判断して何割ぐらいの集客なら収支がだいたいイコールになるか、と考えます。
そうやって集客の目標を設定するのですが、そのハードルはなるべく超えやすい高さにしないといけません。そうすると必然的に入場料を高くしないともとが取れないのですが、それで集客に影響が出ては元も子もないので、協賛金を募ったり、支出を極力削ったり(なかなかこれも難しいのだけど…)と何かしらの努力をしなければいけません。

そもそも、キャパ50%以下で収支をプラスに出来るような公演開催って非常に難しいと思います。私も今回のリサイタルに関しては正直最初から赤字前提でしたし、私個人にたくさんお金があるわけではないので笑、補助金がなければ絶対に開催は出来なかったです。

世の中で開催されるすべての演奏会が補助金や協賛金を得られているわけではありません。ましてやコロナ禍で演奏会に足を運ぶ人が少なくなっている上に、緊急事態宣言前から自主的に観客数制限を設けていた公演などは大打撃だったと思います。

では開催を中止すればいいじゃない?と思うかもしれませんが、そんな簡単な話でもないのが現実で…。コロナ禍におけるキャンセル料は会場によってもまちまちで、コロナの影響でキャンセルする場合はキャンセル料免除というところもあれば、そうでないところもあります。
キャンセル料が通常通りかかるのは特に民間運営の会場に多い気がしますが、会場側だって死活問題ですから仕方のないことだと思います。

もうひとつはゲストの方への配慮です。私は今回、仮に何らかの理由で開催できなかったとしても出演料の一部はお支払いすることとしていました。
それは私自身、コロナ禍で仕事が全部キャンセルとなったときにつらい思いをしたからです。仕事が激減したこともつらかったですが、仕事がキャンセルになったとしても殆どの場合何の補償もないのがフリーランス演奏家の宿命です。
それを理解できる立場だからこそ、この公演に関わってくださるゲストやスタッフの皆さんに対しては、仮に開催中止となったとしても出来る限りの補償はしたいと考えていました。

この時期演奏会の開催中止を決断された方もそうでなかった方も少なからず苦悩されたと思います。私もそうでした。本当にお疲れ様と伝えたいです!


コンサートの開催についてですが、緊急事態宣言中とそれ以外と何か差があるのかと言うと、私のリサイタルに関しては多少席数を減らした以外には特にありませんでした。

入場前の検温も手指消毒も予定通り行いましたし、客席も間隔をあけて設置するのは始めから決めていたことなので。客席を減らすのはもちろん収入面に影響が出るので苦渋の選択にはなりますが、当日客席を作ってみて、お客様目線で考えたときにこの程度なら安心なレベルだな、と思ったので後悔はしてません。

印象に残っているのは、やはり世の中の人の出が宣言前に比べてやや少ないのかなと。
私の場合今回のリサイタルで久しぶりに電車移動を何回かしましたが、もっと混雑していることを覚悟していたけど思ったほどではなかったことにむしろ安堵を覚えたりもしました。


ただ、やはり困ったこともありました。
緊急事態宣言が延長されたことで、リハーサルでの利用を予定していた会場が使えなくなってしまったのです…。
最初のリハが2月9日、当初予定では緊急事態宣言が明けているはずでした。それが延長となり、会場側から利用制限をかけられてしまいました。弦楽器だけなら利用できていたようなんですが、管楽器が1人でも入ると更に強い制限の対象になると言われ。仕方ないとはいえこういうとき管楽器はつらい…。
何気にこれが一番困ったことかもしれません。

あとはやはり「緊急事態宣言」を理由に来場を控えたいと考えるお客様もいらっしゃったので、ライブ配信(アーカイブあり)を同時に行ったのは正解だったなと思いました。
配信チケットは収支は完全に度外視して自分が買ってもいいと思えるギリギリのラインで価格設定しましたが、それでも費用がかかるのであれ以上下げることは出来ませんでした。

演奏は生で聴くのが一番とよく理解されているお客様がほとんどだと思いますが、それでもわざわざチケットを購入していただき時間を割いて視聴していただいたお客様には感謝の気持ちでいっぱいです。いつか私の音をぜひ生で聴いていただけるようにこれからもがんばります。

また、このような状況下でも会場まで足を運んでいただいたお客様に心から感謝いたします。クラシックコンサートは元来静かに聴くものですから、個々の感染対策がしっかりしていれば比較的安全だと思います。ぜひこれからも皆様の状況の許す限り、私のかかわる公演だけでなく、様々なクラシックコンサートに足を運んでいただきたいなと思います。そのためにもお元気でいてくださいね!


緊急事態宣言の延長が決まりましたが、私個人としてはこれからも変わらず感染対策をしながら活動を続けていきたいと思います。

そして近々、また皆様に良いお知らせが出来るよう水面下で動いていきます。お楽しみに!


最後まで読んでいただきありがとうございました!

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